2015年6月例会報告

6月13日(土)午後、岡山地方史研究会6月例会を行いました(参加者8名)。

 報告者は、この春に岡山大学文学部を卒業した小野功裕さんで、卒業論文の「歩兵第十連隊戦史―滕県城攻撃から見た兵士達の戦場―」の内容を報告して下さいました。

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 歩兵第十連隊とは、大正14年(1925)から岡山(現在の岡山大学の敷地)に駐屯し、岡山県全体を徴兵区域とした「郷土部隊」でした。報告では、その部隊が昭和12年(1937)8月に日中戦争に出征後、翌年3月に実施した山東省の滕県城攻略戦の実態を「戦闘詳報」という史料や現地の郷土史家による研究をもとに明らかにされました。特に、捕虜や民間人を殺害するという戦争犯罪にあたる行為がどれほどあったのかという点を中心に、丹念な史料分析がなされていました。

 報告者は、現在、多くの日本人は「戦争」と言えば昭和16年以降の対米戦争のことをイメージし、日中戦争については非常に希薄なイメージしか持っておらず、したがってそこでの侵略や加害の歴史についても切実な認識を持ちえていないという点をきびしく指摘されました。

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 まずは、そこで何があったのかということを明らかにし、それを社会の共通認識としてゆくことは歴史学の大きな務めであるにちがいありません。
(文責:山下 洋)

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