お知らせ

2013年7月例会報告

7月20日に、「畿内幕領における代官所の地方支配」と題して、尾崎真理さんに報告していただきました。

報告では、近世後期社会において、国訴や郡中議定などに代表されるような広域連合が形成される中で、大坂にあった二つの代官所(鈴木町と谷町)が、どのように領内を支配していたのかについて、関係する庄屋文書や代官日記等に基づいて分析している途中経過を話していただきました。

Dscn0126_2

これまでに行われてきた地域社会論の成果に学びつつも、民衆の代官所に対する意識や、支配替えを忌避する論理などについて、史料分析を通じて明らかにしようとされていました。
また、寛政の改革が一つの画期となる可能性を指摘する等、大変興味深い報告で、参加者との活発な質疑応答が行われました。

報告をお聞きしていて、支配者側の論理と被支配者側の論理の相克が、代官の転任延期を求める領民の訴願運動につながったり、幕末期になっての備荒貯蓄制度の設置へと展開したり、していったのではないかと感じました。
また、行政システムの一翼をになっていた庄屋あるいは大庄屋たちが、どのようにこの時代に活動をしていたのかをしっかりと見直さないといけないとも思いました。

Dscn0125_2

例会終了後、岡山市内の居酒屋で暑気払い会を行いました。今回は、適当な時間に皆さん無事に帰宅することが出来ました。

9月以降の例会については、適宜お知らせいたしますので、ふるってご参加ください。お待ちしています。

2013年6月例会報告

本日、2013年6月例会を終えることができました。次田元文さんが「岡山藩の神職組織と祭祀について」と題して、報告してくれました。参加者は8名でした。

岡山大学附属図書館池田家文庫に残された資料を使い、元禄~明和年間の岡山藩内の神社がどのように集合体として管理されていたか、またそこに関わる人々はどのような動きをしていたのか等について、お話ししていただきました。

近日、『岡山地方史研究』に論文として投稿してくださることになっており、詳細はそちらに譲りますが、先行研究が無い中、丹念な史料解読と整理・分析が、これまで空白だった時代の神社の動向を明らかにしてくれる興味深いものでした。

さらに、改良を加えて投稿してくださるとのことでしたので、皆さんもどうぞお楽しみに。Dscn5086

2013年5月例会報告

 5月18日13時半から、5月例会を行いました。今回の報告は、大阪大学大学院の東野さんに書いていただきました。
 例会の後には、場所を変えて懇親会を開催しました。大変盛況な会となりました。参加してくださった執筆者の皆様、報告をしてくださった森元純一さんありがとうございました。Photo

 今回は、水本邦彦編『環境の日本史4 人々の営みと近世の自然』(吉川弘文館、2013年)の合評会として、森元純一さんにご報告いただきました。参加者は、25名でした。当日は、水本氏をはじめとして、執筆者8名にも足をお運びいただきました。

 前著は、近年関心が高まっている歴史における環境と人の生活との関連について、「大地と社会」、「ヒトと動植物の生態」、「自然と「共生」」の3部10篇の論考によって迫ったものです。
 まず、前著に収録されている10篇の論考それぞれと全体について、森元さんが内容要約と疑問点、問題点を提示されました。
Photo_2

 参加者からは、江戸時代と現在との「自然」概念の相違、自然と人間の「共生」の内実、自然と人間との関係の段階的変容、海を取り上げた論考が収録されていないことなどについて、多くの質問や意見が出されました。
 個別の質問に対して、各執筆者から丁寧な回答があり、最後に水本氏から本書全体を通じての狙いや、江戸時代の自然と人間の関係の変容についてお答えいただきました。また、水本氏からは編著を作っていく際に苦労した点や、当初の構想などについてもお話いただき、とても興味深いものでした。
Photo_3

 森元さんの報告をはじめとして、遠方からもお集まりいただいた執筆者、参加者のみなさまからの活発な発言により、大変盛り上がった会となりました。みなさま、ありがとうございました。

『岡山地方史研究』129号の発刊について

『岡山地方史研究』129号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第129号 2013.5
論文 岡山藩前期における儒葬墓-藩主及び家臣・陪臣を中心に-…北脇義友(1)
論文 岡山藩池田家における分家大名への認識とその活動…藤尾隆志(28)
博物館・展示会めぐり 京都国立博物館特別展覧会「宸翰 天皇の書-御手が織りなす至高の美-」(2012年10月13日~11月25日)を観覧して…辰田義雄(41)
博物館・展示会めぐり 岡山県立記録資料館 平成24年度企画展「おかやまの名物・名産」…東野将伸(46)
岡山県地域史研究文献目録(中世の部)…(52)
編集後記…(48)

129

2013年4月例会報告

4月20日13時半から,4月例会を行いました。今回は,大阪大学大学院の久野 洋さんが,「明治期地方都市政治史研究の視角-岡山市上水道布設問題をとおして-」と題して報告をしてくださいました。参加者は,15名でした。

Dscn4679_3

明治時代に行われた岡山市における上水道の布設問題と、当時の政治状況とを併せて分析する事で、「市政刷新」の論理とそれが登場してきた背景を分析する事をねらったものでした。

Dscn4681_2

参加者からは、用語の確認や、明治期の岡山市の上水道の整備状況や、学区単位で構成されたとした選挙関連団体等のことについて、質問や意見が出されました。久野さんからの積極的な回答も含め、大変盛り上がりました。

久野さん、お世話になりました。ありがとうございました。

次回5月例会は、5月18日(土)13:30~、岡山大学総合研究棟2階演習室(5)において開催いたします。『環境の日本史』4の書評会を行います。

夜には懇親会を予定しております。参加希望の方は、5月10日(金)までに内池までお申し出ください。会場準備の関係上、当日急な参加をお断りすることがありますので、その際にはご了承願います。

2013年2月例会報告

2月9日13時半から,2月例会を行いました。今回は,大阪大学大学院の東野将伸さんが,「近世後期の頼母子講運営と豪農・豪農商」と題して報告をしてくださいました。参加者は,14名でした。

現在の井原市内に残っている平木家文書(庄屋を勤める家)を用いて,精緻な分析を行った結果を,報告してもらいました。50近くの講に参加していた平木家が,どのように関わっていたのかや,ある講の運営の内容についての説明がありました。

参加者からは,頼母子講の機能や地域社会での位置づけ等について活発な意見が出されました。

近代への見通しや,家の経営との関係性など,いくつかの課題点もありましたが,地域社会を見るための一つの視点としての頼母子講の可能性が明らかにされたことが大きな成果だったと思います。
大阪から報告に来てくれた東野さん,報告ありがとうございました。

次回,3月例会は,3月2日の岡山史料ネットのフォーラム参加となります。Dscn4493

Dscn4494

2013年1月例会

「「産む」「育てる」ことの近代」と題して,沢山美果子さんによる報告を行いました。参加者は10名でした。寒い中,お集まりいただきありがとうございました。

『邑久町史』に掲載されている業合家の日記をもとにして,明治15年(1882)の地域における子育てや出産についての分析をされた,途中経過をお話いただきました。近世,近代の連続・非連続に留意しつつ,日記から見えてくる当時の状況から,日本の近代化過程を垣間見ようとした取り組みだったと思います。

参加者からは,業合家の近代社会での位置づけや評価の妥当性,邑久郡上山寺村の状況把握,医療技術の変化,日記という個人資料の利用について,活発な意見・感想が出されました。
今後,今回の報告内容は,著作物にされるということでしたので,いずれ沢山さんのお仕事として発表されると思います。詳細については,そちらをお楽しみにしてください。
Dscn4409

次回は,2月9日(土) 13時半から,岡山大学総合研究棟演習室(3)において,東野 将伸さんによる「近世後期の頼母子講運営と豪農・豪農商ー備中国後月郡・小田郡を題材にー 」と題して行います。ふるってご参加ください。

Dscn4410

『岡山地方史研究』128号の発刊について

『岡山地方史研究』128号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第128号 2012.12

論文 中近世移行期の備前国人と地域産業-林原美術館所蔵年欠八月四日付け宇喜多直家書状を端緒として-   森 俊弘(1)
研究ノート 備前国児島郡の大庄屋の変遷について  … 北村 章(23)
2011年度会計決算・監査報告 … (38)
編集後記 … (38)
岡山県関係論文目録・抄(近世の部,2005~2010年) … (39)
Dscn4238

 

2012年12月例会

 今回の12月例会も前回10月例会と同様に、岡山県立記録資料館が実施している平成24年度第2回調査報告会に参加する形で行われました。一般の参加者も含め12名の方が参加されました。
 報告者の加納亜由子さんは、以前の先行研究では、家の非相続人である当主の弟は「一人前として扱われなかった」と評価されてきましたが、有元家を事例に家の存続において当主の弟の果たした一定の役割を日記から具体的に見てみようという報告でした。
 
Dscf2122_2
 加納さんの発表のご趣旨ですが、当主勇次郎公務出張中に交わした弟左吉郎の書簡からは、当主不在時は家事・公務とも頻繁に書状を交わして報告し、当主の意思決定を仰いだり、不在の間は当主がつけていた日記も代筆するなど、当主に成り代わって家の業務を代行してることが読み取れる。また、有元家が所持していた「仲ノ田」という土地が不明という土地問題では、当主の留守中に留守を預かる息子喜代蔵に対して書状で「万歳楽」という替え地を宛て年貢を納めるという解決案を弟左吉郎が提示するなど、家のことに関して積極的に発言していることからも、有元家の事例において当主の弟が果たした役割は大きいとの発表趣旨でした。
Dscf2124
 発表後の質疑応答では、一般方を含め参加者各自の活発な意見(感想)が出され、話し合いが大変盛り上がりました。加納さんありがとうございました。

以上の文章は,当日参加された金谷芳寛さんが寄せてくださいました。金谷さん,ありがとうございました。

1月例会は,1月26日(土) 13:30~ 岡山大学総合研究棟2階 演習室3で行います。報告者は,沢山美果子さんで,現在タイトルについては調整中です。決まりましたら,メーリングリストや掲示板で連絡いたします。

 
 

2012年10月例会の報告

本日開催された岡山県立記録資料館が行う平成24年度第1回調査報告会に参加する形で、10月例会を実施いたしました。研究会以外の参加の方も含めると13名の方が居られました。

定兼学館長が、「古文書の整理・保存に関する諸理論と地方史研究について」と題してお話をしてくださいました。
話の概要としては、長期的な視野に立って歴史資料に関係する仕事(本業ではなくても)を続けていく必要があること、文書館学的記録資料整理論に基づいた資料の保存が必要であること等がありました。
お話の中で、「アーキビストは、まず地域(郷土)研究者たれ」と定兼さんが言われた言葉が印象にとても残りました。

Dscn3601_3
Dscn3602

感想を述べ合う場面では、明治の岡山県内の災害記録を見て、現在の我々が学ぶことがあり、そのことを啓発していかなければならないと感じたということや、古文書解読ボランティアが高齢化していくことに危機感を持っているということ、大学生や院生が成果主義に追われて、「資料のある地元を愛する」ことを忘れていて、改めてそのことが大切だと感じた等のことが参加された方々から出ていました。

会の終了後、参加した方々はおのおの閲覧室に行ったり、展示を見学したりして、皆さんそれぞれの研究に資する情報を得ておられたようです。

記録資料館では、11月10日(土)13時30分~15時に、有薗正一郎氏(愛知大学教授)を講師に招いて、「江見農書」について講演会を企画されているようです。興味のある方は、是非ご参加ください。また、記録資料館活動報告資料集『岡山のアーカイブズ』も出されているようですので、ご希望の方は、記録資料館までお尋ねください。

12月例会も、記録資料館が行う第2回調査報告会に参加することにいたします。12月8日(土)13:30~ですので、ふるってご参加ください。