10月例会報告

1019()10月例会を行いました(参加者:12)。山田祐理子さんが「近世後期備中国における用水争論と地域秩序―都宇郡沢所用水組合を中心として―」と題して報告をしてくださいました。

山田さんは先行研究を踏まえ,近世の地域社会が領主支配との相互関係の中でどのように秩序を保っていたのかという点について,所領が錯綜する備中国都宇郡の沢所用水組合での用水争論を題材に検討されました。

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報告では,争論が様々な要因のために内済困難となってゆく過程を明らかにされました。その際,経済力を背景に地域社会に対する発言力を持つ大商人や大地主といった有力者が倉敷代官所と地域社会との間に在って,社会内部の利害調整を行うことで秩序を保っていたことを指摘されました。

 討論では,上記の有力者をどのように評価するかについて,組合とそれを形成する村との関係や領主権力の影響力といった点にも触れながら意見が交わされました。

報告していただいた山田さん,ありがとうございました。(小野)

 

 

次回以降の例会は下記の予定で行います。ふるってご参加ください。

 

〇11月例会

 日時:11月16日(土) 13時30分開始

 場所:岡山大学社会文化学研究科総合研究棟2階演習室(5)

 報告者:小野功裕

題目:「総力戦体制下の軍隊と地方行政 ―岡山県を事例に―」

 

〇12月例会

 日時:12月21日(土) 13時開始 ※通常より30分早い開始となります。

 場所:岡山大学社会文化科学研究科総合研究棟2階演習室(5)

報告者:東野将伸さん

題目:準備中

 

〇総会並びに忘年会

 12月例会終了後,同じ会場にて今年の総会を開催します。

総会終了後は場所を変えて忘年会を予定しています。詳細は後日に案内いたしますので,今しばらくお待ちください。

 

岡山地方史研究会

小野 功裕

10月例会のお知らせ

岡山地方史研究会の皆様

例会のご案内が遅くなってしまい,大変申し訳ありませんでした。
10月例会を次のとおり行いますので,ふるってご参会下さいますよう,よろしくお願い申し上げます。
9月につきましては,例会はお休みとなります。

〇10月例会
日時:10月19日(土) 13時30分開始
場所:岡山大学社会文化科学研究科総合研究棟2階演習室(5)
報告者:山田祐理子さん
題目:「近世後期備中国における用水争論と地域秩序 ー都宇郡沢所用水組合を中心としてー」

なお,11月と12月にも通常の例会を予定しております。
詳細は後日改めてご案内させていただきます。


岡山地方史研究会
小野 功裕

2019年5月例会報告

511()5月例会を行いました(参加者:8)。北脇義友さんが「徳川前期領民の儒教の墓とその背景 岡山藩を例にして」と題して報告をしてくださいました。

北脇さんは17世紀後半の岡山藩領の儒葬墓を実地調査されました。そして,その成果と文献史料から岡山藩における儒教の広まりの様相とその背景を検討されました。報告では,藩内における儒教の広まりが備前領と備中領では差異があったことや,儒教を民衆に広める上で村役人の存在が大きかったこと等を指摘されました。

 討論では,儒教の広まりと儒葬墓の増加との関連性や,墓を建てることに対する民衆の意識等について意見が交わされました。

報告していただいた北脇さん,ありがとうございました。(小野)

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次回以降の例会は下記の予定で行います。ふるってご参加ください。

 

〇6月例会

テーマ:卒業論文報告会

 日時:6月15日(土) 13時30分開始

 場所:岡山大学社会文化学研究科総合研究棟2階演習室(5)

 報告者・題目

吉藤妃花梨さん「中世出雲国における禅宗寺院の広まりと戦国大名尼子氏家臣団との関係」

政次加奈子さん「幕末維新期岡山藩の農兵」

 

〇7月例会

テーマ:大門正克ほか編『「生存」の歴史と復興の現在』(大月書店,2019年2月)の合評会

 日時:7月20日(土) 14時開始

 場所:岡山大学社会文化科学研究科総合研究棟2階演習室(5)

報告者:山下洋さん

コメント:沢山美果子さん

当日は編者の参加も予定されています。

※合評会後には懇親会を予定しています。詳細は後日案内いたします。

2019年2月例会報告

223()2月例会を行いました(参加者:9)森元純一さん「大國家文書から発見された頼山陽書状」と,首藤ゆきえさん「~史料紹介~ 旗本小堀家一族から村庄屋へ宛てた書状」の二本の報告が行われました。

森元さんは,備前国和気郡にあった大國家が所蔵する屏風に貼られていた頼山陽の書状2点を紹介されました。報告では書状の年代比定を行うと共に,書状が大國家に伝来した理由を考察されました。

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首藤さんは,17世紀初頭に備中国奉行をつとめた小堀家の分家で同国内に領地を有した旗本としての小堀家が,領内の庄屋へ宛てたいずれも元和期と考えられる書状4点を紹介されました。報告では,支配をめぐる領主の本家と分家の関係を中心に検討を加えられました。

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討論では,森元さんの報告に対して,書状から読み解れる当時の頼山陽のような人々の交流活動に関して,近世における文化人とはどのような人々を指すのかという点について,意見が交わされました。首藤さんの報告については,書状から読み取れる当時の支配の在り方をめぐって領主権力と領民との関係はどのようであったのか,といった議論が行われました。

報告していただいた森元さん,首藤さん,ありがとうございました。(小野)

 

 

次回の例会は下記の日程で行います。ふるってご参加ください。

 

3月例会

 日時:316() 1330分開始

 場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

 報告者:山本隆一朗さん

題目:「豪圓の寺院再興と近世伯耆大山寺の成立」

2018年4月例会報告

4月例会(参加者4人)
田中さんは、岡山東照宮祭礼の全体像を明らかにする構想で研究を進めらています。
正保2年(1647)の勧請から最後の慶応3年(1867)までの変遷を見ると大きく4期区分できるという。
今回はその第1期池田光政時代の報告でした。
まず、勧請した光政の想いを分析し、氏子町の設定と神輿渡御の道筋を確認されました。
行列については、流鏑馬と馬揃えの上覧から楽人が加わり、やがて軍装行列に変化したと述べられ、それらの意義を田中さんは「東照大権現に供奉する家臣や神職・楽人に、藩政への参画を自覚させるだけのものではなく、見物する家臣家族や領民達にむけて、政策遂行の強化な意志を視覚化するためのものであった」とされます。
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そしてその後は次第に簡略化・儀礼化が進んでいることを論証されました。
討論では、流鏑馬を中止した理由や、「行列儀礼化が政策遂行の訴求装置」とする意味などについて議論となりました。
実に密度濃い充実した月例会でしたけれども、参加者が少なくてもったいない気がいたしました。
田中さんは、この報告をもとに執筆にして公表する意欲をお持ちです。楽しみです。
さらに、第2期以降はどのように展開し、田中氏はそれをどのように評価し、説明されるのか、これまた楽しみです。(定兼)
なお、次回以降の例会は次の予定です。HPへ合わせて掲載の程よろしくお願いいたします。
5月例会
日時:5月19日(土) 13:30~
場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)
報告者:綱澤広貴さん
題目:「近世後期津山松平藩における支配機構の構造と下級役人」
6月例会
日時:6月30日(土) 13:30~
場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)
報告者:三宅正浩さん
題目:準備中

5月例会報告

513()5月例会を行いました(参加者:17)。今年度から岡山大学大学院社会文化科学研究科に進学された板谷真由さんと山田祐理子さんが、卒業論文を報告してくださいました。

板谷さんは「17世紀後半の新吉原と浅草田町」と題して報告されました。新吉原の周辺地域であった浅草田町をフィールドとして設定し、17世紀における遊女奉公の実態を分析されていました。そして、浅草田町にある遊女屋が新吉原へ遊女を転売していた事例から、新吉原に対しその周辺地域が遊女の供給地として機能していたのではないかと指摘されました。

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山田さんは「近世後期備中の用水組合と地域自治 ―都宇郡沢所組の事例から―」という題で報告されました。幕領(倉敷代官所)、藩領(岡山藩)、旗本領(戸川家)と支配者が入り組んだ備中国南部において、用水を管理するために成立した沢所組の実態と、嘉永
6年に起きた用水をめぐる争論について検討されていました。この沢所組の運営には、大庄屋や郡中惣代といった中間支配機構が介入せず、組を構成する村々の庄屋や名主によって行われていた点から、領を越えた地域社会の自治が見られることを明らかにされました。

報告後の質疑応答では、まず板谷さんの報告に対して、新吉原とその周辺に広がる地域の性格を把握する必要性があることや、売られる女性の意識はどうだったのかという遊女の主体性に関する問題等について意見が出されました。山田さんの報告については、沢所組を構成する村々の規模や、その自治の実態はどれほどであったのか、争論において自治が機能しなくなった場合の支配者側との関係性等について議論となりました。

前回の例会に引き続き、今回も多くの方が例会に参加してくださいました。今回の例会をとおして、研究史を整理し、史料を丁寧に読み込んだ上で様々な視点から解釈していくことの重要性を改めて認識しました。歴史学の研究に携わる者にとって当然のことではありますが、はたして自分にはそれができているか、反省しなければならないように思います。

報告をして下さったお二人の方,ありがとうございました。(小野)

6月例会は、下記の要領で開催いたします。ふるってご参加下さい。


○6月例会

日時:610日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者:別府信吾さん

タイトル:「塚村嘉伝太編著『剥復録』と西山拙斎」

4月例会報告

4月例会を、415日(土)13:30から行い、14名の方が参加してくださいました。

 

原豊二さんが、「池田光政書写本について~和歌関連資料を中心に~」と題して報告されました。近年、池田光政が筆写した風葉和歌集が見つかりましたが、それ以外にも光政や綱政が筆写した和歌集があり、誰に見せてもらったのかや、どうしてそのような筆写をしたのかについて検討した事柄について話してもらいました。

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参加者からは、和歌集等についての情報のやりとりをどのようにしていたのか、なぜ何度も筆写したのか、藩主の文化活動とはどのようなものだったのか等の質問があり、活発な話し合いが行われました。

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忙しい中、報告してくださった原さん、ありがとうございました。

 

5月以降の例会は、下記の通りです。

5月例会

日時:513日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者(1):板谷真由さん

タイトル(1):「17世紀後半の新吉原と浅草田町」

報告者(2):山田祐理子さん

タイトル(2):「近世後期備中の用水組合と地域自治ー都宇郡沢所組の事例からー」

※なお、当日18時から、鳥好野田屋町店で懇親会を行います。希望される方は、56日(土)までに上村和史さん(uemura05(アットマーク)gmail.com)までご連絡ください。

 

○6月例会

日時:610日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者:別府信吾さん

タイトル:「塚村嘉伝太編著『剥復録』と西山拙斎」

4,5月例会のお知らせ

岡山地方史研究会の皆様

 4、5月例会を下記の要領で行います。ご参加下さいますよう、お願いいたします。

4月例会

日時:4月15日(土)13:30~

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

題目:池田光政書写本について~和歌関連資料を中心に~

報告者:原 豊二さん(ノートルダム清心女子大学)

5月例会(日にちを替えております)

日時:513日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者・題目: ○板谷真由さん「17世紀後半の新吉原と浅草田町」

         ○山田祐理子さん「近世後期備中の用水組合と地域自治ー都宇郡沢所組の事例からー」

その他:例会後に懇親会を行う予定です。こちらについては、後ほどお知らせいたします。

 

岡山地方史研究会

内池英樹

 

2016年7月例会報告

 7月2日(土)、7月例会を行いました(参加者:9名)。大阪大学大学院の古林小百合さんが、「豪農による地誌出版の経緯とその受容―備中国川上郡平川村平川金兵衛による地誌『備中府志』の出版活動を事例として―」と題して、報告をして下さいました。

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 『備中府志』は、平川村の庄屋を務めた平川金兵衛が備中国の古城跡について著した地誌です。報告では、先行研究の成果を踏まえながら、平川金兵衛が大坂の書肆毛馬屋から『備中府志』を自費出版した経緯について、主に平川金兵衛と毛馬屋との書状等から詳しく分析されていました。

 参加者からは、出版された『備中府志』の受容層は由緒を持つような上層農民に限られたのではないか、自費出版の場合、版木の所有権は著者と書肆のどちらにあるのか、『備中府志』を出版した毛馬屋の性格などについて、意見が出ました。また報告では、『備中府志』は武士層にも読まれていたことが指摘されていましたが、史料解釈を通して、その武士は備中国出身あるいは何らかの関わりを持つ者であったのではないかといった意見も出ました。
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 個人的には不勉強な部分が多く、終始参加者による議論の傾聴でした。今回の報告を通して、庄屋クラスの上層農民が地域の過去に目を向けてその成果を地域へ還元した点に、近世の人々が持っていた地域意識の一端を感じることができたと思います。(小野)

2016年6月例会報告

 6月11日(土)、6月例会を行いました(参加者:4名)。山下洋さんが「第一七師団の設置と風紀問題」と題して、報告をして下さいました。

 今回の報告では、日露戦争後に新設師団の誘致活動が全国的に活発化する中、その実態を風紀に関する諸問題を中心に、岡山地域を事例として当時の新聞記事から検討されていました。

 師団をはじめとする軍隊の存在は地域社会に大きな影響を及ぼしますが、風紀に関する主要論点としては、やはり遊郭が挙げられます。岡山地域でも従来から存在した遊郭の位置をめぐって、様々な意見を持つ人々が現れます。報告では、師団設置による地元経済への効果を期待した経済界や、風紀悪化を懸念し「教育地」である岡山を守ろうとする教育関係者等、兵士だけでも数千人規模の人口増となる師団設置をめぐって生じた地域社会内部のせめぎあいについて、明らかにされていました。
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 報告後の議論では、師団誘致活動だけでなく師団設置後における地域社会の様相を、物流や就業別人口等を例に数値を用いて分析することも必要である、他の師団設置地域との比較をとおして岡山地域の特質が見えるのではないか等といった意見が交わされました。また風紀問題だけでなく、師団誘致活動における用地買収や設置費用の点についても議論となりました。

 近代日本を考える上で軍隊は重要な論点の一つですが、地域社会と軍隊との関係をめぐる研究は近年になってようやく盛んになりました。「天皇の軍隊」と称されることが多い日本軍がどのように地域社会や一般民衆と関わっていたのか、史料の残存状況にもよりますが、各地域での事例研究の蓄積が今後も必要だと思われます。

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次回は、下記の要領で行います。皆さんのご参加、お待ちしています。

日時:7月2日(土)13:30~ 

場所:岡山大学 総合研究棟 2階演習室(5)

報告者:古林小百合さん

タイトル:「文化人による地誌出版の動機と経緯―備中国川上郡平川村庄屋平川金兵衛による地誌『備中府志』の出版活動を事例として―」