2015年5月例会報告

5月23日(土)午後、岡山地方史研究会5月例会を行いました(参加者9名)。

報告者は、斎藤夏来さん(岡山大学教育学部)と卒業生の谷舗昌吾さんでした。題目は、「栄西認識の変遷ー栄西呼称をとおしてー」でした。

まず、斎藤さんの方から栄西の実態を見つめていくためには、栄西と禅律仏教と、五山派との接続関係、異同の明確化を計っていく必要があるという説明がありました。その後、谷舗さんから『大日本史料』『五山文学新集』を中心とした史料収集、分析結果の報告がありました。Dsc_0469

今後、会誌に載せる方向でさらに研究を進められるということですので、簡単にまとめると、「葉上」「千光」等の呼称が使われるが、それらにはそれぞれ背景や意図があり、時期区分や掲載されている史料の特性を明らかにすることができるというものでした。
中世と近世とでは、「千光」の後ろに付けられる肩書きも変わっていくことも明らかになってきているということについても、説明がありました。
Dsc_0470

その後の質疑応答では、変化していく背景にある社会的必要性はなんだったのか、栄西以外の新鎌倉仏教の始祖はどうだったのか、また使用した史料以外には対象となるものはないのか、等について質問が出ました。

谷舗さんは卒業後、働きながら研究を続けていきたいということを話してくださいました。谷舗さんと、斎藤さんの熱意あふれる発表で、質疑応答も盛り上がったと思います。お二人、ありがとうございました。

6月例会は下記の要領で行います。お忙しいとは思いますが、ふるってご参加ください。また、7月例会は7月4日に行います。終了後、懇親会を行います。懇親会に参加を希望される方は、内池までご一報ください。スムーズな例会運営にご協力いただきますよう、よろしくお願いします。

(6月例会)
    日時:平成27年6月13日(土) 13:30~
    場所:岡山大学総合研究棟二階演習室(5)
    報告者:
   
    小野功裕さん
    題目:「歩兵第十連隊戦史 滕県城攻撃から見た兵士達の戦場
      

2014年9月例会報告

幕府領陣屋元村の掛屋と陣屋・地域社会と題して、備中国窪屋郡倉敷村を取り上げ報告してくださいました。

山本さんは、以前から倉敷村にあった代官陣屋を中心に研究をされており、2010年には清文堂から『近世幕府領支配と地域社会構造』を刊行されています。
今回は、代官陣屋の掛屋をしていた水沢家や大橋家のことを取り上げられていました。いずれも19世紀後半に活躍した豪商ですが、山本さんによると金融業を生業としていた大橋家は、そのノウハウを活かしていたのではないかと指摘されていました。また、公金の管理という役割は、大橋家自身の格式を上昇させていくことにも繋がっただろう等、興味深いお話を聞かせてくださいました。

Img_0371

質疑応答では、掛屋の実態や活動内容、大橋家当主のパーソナリティ、倉敷村内部の重層構造等が話題となりました。

Img_0373

次回は、下記の要領で行います。ふるってご参加ください。
日時:10月18日(土)13:30~
場所:岡山大学総合研究等2階演習室(5)
報告者:蒲谷和敏さん(大阪大学大学院博士前期課程2年)
題目:「第一次大戦期の社会変容と水道ー尼崎における水道布設を手がかりにー」

2013年5月例会報告

5月31日(土)13:30から、5月例会を行いました。参加者は12名でした。

報告してくださった順は、次の通りでした。
・史料紹介 大森文介の手習い手本 (倉地克直さん)
・近世豪農が残した「記録」の特質について(森元純一さん)
・「柏に鷹図」をめぐって(柳川真由美さん)

以前からお知らせしたように、今回は6年目を迎えた和気町 大國家資料調査の中間報告会で、『岡山地方史研究』127号以降の成果を3人の方がお話しくださいました。簡単にまとめると、以下の通りになります。

Dsc_0500倉地さんは、よくある手習い手本とは違い、大國家の手習い手本は、閑谷学校教授・有吉和介が書いた物で、「学校は何よりも礼儀が優先されるところです」等と礼儀や孝経素読を重視していることを読み取ることができると報告しました。

森元さんからは、大森文助が残した書付類から、文助のライフヒストリーが読み取れることは勿論、どうして文助が家系や家相などに興味を持ち、大切にしていたのかについて報告しました。
そして、文助の行動や記録はイエを軸にしていて、祖父・親・兄弟・世話になった人々への思い出と巡り合わせを、子ども達に言い伝えをしていたことも紹介してくれました。

柳川さんは、「柏に鷹図」(藤井高尚賛あり)と「とりの覚書」という絵画と書付の2点を取り上げ、江戸への訴訟の旅の中でであった様々な出来事をまとめた「とりの覚書」と、最後の場面でたまたま出会った「柏に鷹図」の購入とが、大森文助の心に吉事として残り、藤井高尚に賛を書いて貰うに至った経過等について報告しました。

Dsc_05013人からの報告の後、質疑応答を行いました。その中では、大國家の他の資料の残存状況、文助の家相や占いに対する想いをどのように評価するべきか等の感想や意見が出されました。

現在も資料調査は行われていますので、興味のある方は、和気町の森元さんまでご相談ください。

次回は、6月14日(土)13:30から、岡山県立博物館において特別展「山田方谷」の特別解説と、展示を担当している竹原伸之さんからの報告をしてもらいます。入館料が必要ですが、とりあえず13時以降に受付までお越しください。
また、7月5日の懇親会への参加希望の方は、内池までご連絡ください。当日、急なご参加はお断りすることがありますので、御了知ください。

『岡山地方史研究』131号の発刊について

『岡山地方史研究』131号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第131号 2013.12
歴史随想 「日記」資料に寄せて…在間宣久(1)
論文 岡山藩の神職組織と祭祀について…次田元文(7)
論文 近世後期の寺院頼母子と檀家-備中国後月郡の寺院を題材に-…東野将伸(28)
編集後記…(54)
岡山地域史研究文献目録(総説)…(58)

Dscn5156

『岡山地方史研究』130号の発刊について

『岡山地方史研究』130号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第130号 2013.9
論文 「法事の赦」の構造分析-岡山藩池田家を事例に–…谷口眞子(1)
合評会・『環境の日本史4』を読む
書評 水本邦彦編『環境の日本史4 人々の営みと近世の自然』…森元純一(16)
書評会参加記…水本邦彦(21)
参加記 水本邦彦編『環境の日本史4 人々の営みと近世の自然』の合評会に参加して…糸川風太(25)
紹介 北村章編『備前国八浜八幡宮関係史料集』…内池英樹(28)
博物館・展覧会めぐり 岡山県立博物館 栄西禅師八〇〇回忌記念事業 平成二十五年度特別展「栄西」を観覧して…辰田義雄(29)
歴史談話室 小瀬中務と小瀬甫庵…大西泰正(35)
岡山地域史研究文献目録(近現代の部)…(46)
編集後記…(37)

2013年10月例会について

10月19日(土)13時半から、岡山大学総合研究棟演習室において、10月例会を行いました。関西大学大学院の古林小百合さんが、「由緒書の成立背景についての考察」と題して、備中国川上郡平川村H家の由緒書を事例に取り上げて報告してくれました。
Dscn4805

村の由緒と家の由緒の共通点と相違点を意識しながら、中世に西遷してきたH家の由緒が、江戸時代を通してどのように生きていたのか等について、興味深い話をしてくれました。

現在作成中の修士論文の途中経過の話でしたが、享保期に成立したと考えられる由緒が、どこまで中世史の事実として通用するかや、近世に於ける豪農経営の一端と由緒との関わりなど、長く続いていったH家の特徴がよく分かるものとなっていました。
Dscn4804

参加者からは、それぞれの興味に沿ってではありますが、家の成り立ちや豪農経営の状況等について活発な質問や意見が出てきました。個人的には、H家がどのように中世における由緒を、近世へ繋げていったのか。また、それを近世の子孫がどのように活用していったのかがおもしろかったです。

古林さん、ありがとうございました。

次回は、11月24日(日)13時半から、岡山県立記録資料館において12月例会を行う予定です。なお、当初予定していた忘年会は、諸般の事情により行わないことにさせていただきます。ご了承ください。

2013年7月例会報告

7月20日に、「畿内幕領における代官所の地方支配」と題して、尾崎真理さんに報告していただきました。

報告では、近世後期社会において、国訴や郡中議定などに代表されるような広域連合が形成される中で、大坂にあった二つの代官所(鈴木町と谷町)が、どのように領内を支配していたのかについて、関係する庄屋文書や代官日記等に基づいて分析している途中経過を話していただきました。

Dscn0126_2

これまでに行われてきた地域社会論の成果に学びつつも、民衆の代官所に対する意識や、支配替えを忌避する論理などについて、史料分析を通じて明らかにしようとされていました。
また、寛政の改革が一つの画期となる可能性を指摘する等、大変興味深い報告で、参加者との活発な質疑応答が行われました。

報告をお聞きしていて、支配者側の論理と被支配者側の論理の相克が、代官の転任延期を求める領民の訴願運動につながったり、幕末期になっての備荒貯蓄制度の設置へと展開したり、していったのではないかと感じました。
また、行政システムの一翼をになっていた庄屋あるいは大庄屋たちが、どのようにこの時代に活動をしていたのかをしっかりと見直さないといけないとも思いました。

Dscn0125_2

例会終了後、岡山市内の居酒屋で暑気払い会を行いました。今回は、適当な時間に皆さん無事に帰宅することが出来ました。

9月以降の例会については、適宜お知らせいたしますので、ふるってご参加ください。お待ちしています。

2013年5月例会報告

 5月18日13時半から、5月例会を行いました。今回の報告は、大阪大学大学院の東野さんに書いていただきました。
 例会の後には、場所を変えて懇親会を開催しました。大変盛況な会となりました。参加してくださった執筆者の皆様、報告をしてくださった森元純一さんありがとうございました。Photo

 今回は、水本邦彦編『環境の日本史4 人々の営みと近世の自然』(吉川弘文館、2013年)の合評会として、森元純一さんにご報告いただきました。参加者は、25名でした。当日は、水本氏をはじめとして、執筆者8名にも足をお運びいただきました。

 前著は、近年関心が高まっている歴史における環境と人の生活との関連について、「大地と社会」、「ヒトと動植物の生態」、「自然と「共生」」の3部10篇の論考によって迫ったものです。
 まず、前著に収録されている10篇の論考それぞれと全体について、森元さんが内容要約と疑問点、問題点を提示されました。
Photo_2

 参加者からは、江戸時代と現在との「自然」概念の相違、自然と人間の「共生」の内実、自然と人間との関係の段階的変容、海を取り上げた論考が収録されていないことなどについて、多くの質問や意見が出されました。
 個別の質問に対して、各執筆者から丁寧な回答があり、最後に水本氏から本書全体を通じての狙いや、江戸時代の自然と人間の関係の変容についてお答えいただきました。また、水本氏からは編著を作っていく際に苦労した点や、当初の構想などについてもお話いただき、とても興味深いものでした。
Photo_3

 森元さんの報告をはじめとして、遠方からもお集まりいただいた執筆者、参加者のみなさまからの活発な発言により、大変盛り上がった会となりました。みなさま、ありがとうございました。

2013年2月例会報告

2月9日13時半から,2月例会を行いました。今回は,大阪大学大学院の東野将伸さんが,「近世後期の頼母子講運営と豪農・豪農商」と題して報告をしてくださいました。参加者は,14名でした。

現在の井原市内に残っている平木家文書(庄屋を勤める家)を用いて,精緻な分析を行った結果を,報告してもらいました。50近くの講に参加していた平木家が,どのように関わっていたのかや,ある講の運営の内容についての説明がありました。

参加者からは,頼母子講の機能や地域社会での位置づけ等について活発な意見が出されました。

近代への見通しや,家の経営との関係性など,いくつかの課題点もありましたが,地域社会を見るための一つの視点としての頼母子講の可能性が明らかにされたことが大きな成果だったと思います。
大阪から報告に来てくれた東野さん,報告ありがとうございました。

次回,3月例会は,3月2日の岡山史料ネットのフォーラム参加となります。Dscn4493

Dscn4494

2013年1月例会

「「産む」「育てる」ことの近代」と題して,沢山美果子さんによる報告を行いました。参加者は10名でした。寒い中,お集まりいただきありがとうございました。

『邑久町史』に掲載されている業合家の日記をもとにして,明治15年(1882)の地域における子育てや出産についての分析をされた,途中経過をお話いただきました。近世,近代の連続・非連続に留意しつつ,日記から見えてくる当時の状況から,日本の近代化過程を垣間見ようとした取り組みだったと思います。

参加者からは,業合家の近代社会での位置づけや評価の妥当性,邑久郡上山寺村の状況把握,医療技術の変化,日記という個人資料の利用について,活発な意見・感想が出されました。
今後,今回の報告内容は,著作物にされるということでしたので,いずれ沢山さんのお仕事として発表されると思います。詳細については,そちらをお楽しみにしてください。
Dscn4409

次回は,2月9日(土) 13時半から,岡山大学総合研究棟演習室(3)において,東野 将伸さんによる「近世後期の頼母子講運営と豪農・豪農商ー備中国後月郡・小田郡を題材にー 」と題して行います。ふるってご参加ください。

Dscn4410