5月例会報告

513()5月例会を行いました(参加者:17)。今年度から岡山大学大学院社会文化科学研究科に進学された板谷真由さんと山田祐理子さんが、卒業論文を報告してくださいました。

板谷さんは「17世紀後半の新吉原と浅草田町」と題して報告されました。新吉原の周辺地域であった浅草田町をフィールドとして設定し、17世紀における遊女奉公の実態を分析されていました。そして、浅草田町にある遊女屋が新吉原へ遊女を転売していた事例から、新吉原に対しその周辺地域が遊女の供給地として機能していたのではないかと指摘されました。

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山田さんは「近世後期備中の用水組合と地域自治 ―都宇郡沢所組の事例から―」という題で報告されました。幕領(倉敷代官所)、藩領(岡山藩)、旗本領(戸川家)と支配者が入り組んだ備中国南部において、用水を管理するために成立した沢所組の実態と、嘉永
6年に起きた用水をめぐる争論について検討されていました。この沢所組の運営には、大庄屋や郡中惣代といった中間支配機構が介入せず、組を構成する村々の庄屋や名主によって行われていた点から、領を越えた地域社会の自治が見られることを明らかにされました。

報告後の質疑応答では、まず板谷さんの報告に対して、新吉原とその周辺に広がる地域の性格を把握する必要性があることや、売られる女性の意識はどうだったのかという遊女の主体性に関する問題等について意見が出されました。山田さんの報告については、沢所組を構成する村々の規模や、その自治の実態はどれほどであったのか、争論において自治が機能しなくなった場合の支配者側との関係性等について議論となりました。

前回の例会に引き続き、今回も多くの方が例会に参加してくださいました。今回の例会をとおして、研究史を整理し、史料を丁寧に読み込んだ上で様々な視点から解釈していくことの重要性を改めて認識しました。歴史学の研究に携わる者にとって当然のことではありますが、はたして自分にはそれができているか、反省しなければならないように思います。

報告をして下さったお二人の方,ありがとうございました。(小野)

6月例会は、下記の要領で開催いたします。ふるってご参加下さい。


○6月例会

日時:610日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者:別府信吾さん

タイトル:「塚村嘉伝太編著『剥復録』と西山拙斎」

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