2012年5月例会

本日、5月例会を行いました。報告者は、森元純一さんで、「近世後期における家相の位置づけをめぐって~大國家文書の世界~」という内容でした。

平成21年からはじまった資料調査の成果の一部を、今回はお話ししていただいたのですが、19世紀の大國家(当時は大森家)の心性にせまる興味深い話でした。

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段ボール箱150箱を超える資料群であり、これから資料調査が進む中で、さらに豊かな近世の人々の生活に迫ることができるのではないかと、個人的には期待をしました。

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なお、今回の報告内容も含めて、『岡山地方史研究』127号(今年発刊予定)で文章が掲載される予定ですので、そちらをお待ちください。

次回は、下記の要領で行いますので、ふるってご参加ください。
日時:2012年6月17日(日) 13:30~
場所:岡山県立記録資料館
講演:佐藤大介(東北大学・災害科学国際研究所)

2012年3月例会

本日、三月例会を行いました(参加者:11名)。

報告者は、今年三月で岡山大学大学院を修了される東野将伸さんでした。「幕末維新期の豪農と地域金融」というタイトルで、備中国一橋領内の産物会所や掛屋の機能等について、丁寧な資料収集及び分析を通じて話をしてくれました。

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「公共性」や「前近代的な金融の機能」等について取り上げられており、それらに対して参加者から活発な意見(感想)が出され、話し合いが大変盛り上がりました。東野さん、ありがとうございました。

四月例会は、4月21日(土)13:30~ 岡山大学総合研究棟第4演習室で行います。報告者は内池で、タイトルは「徳島藩関係史料から見た慶長~寛永期の岡山藩(仮)」です。よろしければ、御参会ください。

2012年1月例会

本日,1月例会を行い,19名もの参加者がありました。「近世編纂物に於ける宇喜多騒動関連記事の再検討」と題して,難波 修さんに報告してもらいました。

近世編纂物の書誌をきちんとおさえ,それを元にしながら,江戸時代の人々がどのように戦国末期の岡山を描いたのかを分析された労作でした。書誌学,歴史学等の諸要素が意欲的に盛り込まれたため,難波さんが明らかにした成果が伝わりにくい部分もありましたが,それらを整理して述べていくことで,いくつもの成果が出てくるのではないかと思いました。

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参加者からは,宇喜多騒動の内部構造や,用いた資料の書誌等について質問が出て,大変活発な意見交換がなされました。今後,難波さんによって,今回の報告を整理したものが共有化されることを期待する意見も出ていました。

難波さん,興味深い報告をありがとうございました。

2月以降の例会は,2月18日(土),3月18日(日)を予定しています。詳しくは掲示板,メーリングリストにてお知らせいたします。

『岡山地方史研究』バックナンバーについて

このたび、会誌『岡山地方史研究』の在庫整理のため、99号以前のバックナンバーについては、希望者に無料でお頒けいたします。ご希望の方は下記あてに郵便またはメールなどで、住所・氏名・号数・冊数をご連絡下さい。

無料でお頒けするのは会員の方に限ります。会員以外の方には1冊700円で販売しています。

各号の内容は、このHPの会誌目録をご参照下さい。なお、号によっては在庫のない場合もありご了承ください。発送は4月以降になります。送料は着払いでお支払いください。例会に参加されれば、その場でお渡しすることもできます。

700-0806 岡山市北区広瀬町8-1-202 
山下 洋あて
yamashita*qd5.so-net.ne.jp

*を@にかえて,ご連絡ください。

2011年12月例会

本日は,3月に開催予定であった狩野久著『発掘文字が語る 古代王権と列島社会』の書評会を行いました。

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評者の古市晃さんには,大変お世話になりました。また,著者の狩野久さんにもご臨席いただき,本の中身だけではなく,これまでの研究活動など,大変興味深いお話しをしていただきました。
お二人とも,大変ありがとうございました。

個人的に「『日本書紀』をどこまで史実として理解していかれているのか」をお尋ねしたところ,言葉を一つ一つ丁寧に検討し,どこまでは史実として理解できるか,史実としては扱えないかを考えているということを,教えていただきました。

それ以外にも,参加した方々がほのぼのとするような狩野さんのお話に引き込まれたひとときでした。

例会の後に行われた総会では,①今年の例会の報告,②今年の会計(中間報告),③来年度の予算案,④会員数の動向と,⑤2012年の会長及び委員の選出を行いました。
②,③については,後日会誌にて報告させていただきます。
会費をまだお納めいただいていない方は,お手数をおかけしますが,お振り込みくださいますようお願いいたします。

⑤については,満場一致の上,次の通りになりました。
会長:定兼 学
編集局:(局長)倉地克直 (補佐)沢山美果子,森 俊弘,山下 洋
事務局:(局長)村上 岳  (補佐)辰田義雄,山本太郎,内池英樹
会計監査:金谷義寛

妻鹿淳子さんには,9年にわたり会長職をお引き受けいただきましたが,今年末をもって退かれることになります。本当に,ありがとうございました。
新体制になりますが,今後とも,どうぞよろしくお願いいたします。

(内池英樹)

2011年10月例会

本日,10月例会を開催いたしました。報告者は,久野洋さん(大阪大学大学院)で,タイトルは「明治中期における岡山県の政治状況」でした。当初のタイトルと異なっていますが,後に首相となる犬養毅や明治30年代の岡山県内の政治状況についてお話いただきました。

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本報告は,今年度末に提出予定の修士論文の一部であるため,ホームページでの詳細な紹介は控えたいと思います。話の概要としては,全国と比較して進歩党系勢力が優勢だったた岡山県独特の状況や,犬養毅やその他の政治家の動向について,丹念な資料収集・分析を行い,明治30年代が一つの画期ではないかと指摘されました。いずれ,何らかの形でその成果を公表していただけると期待しています。

参加者は9名と少なめでしたが,久野さんの情熱と誠実な研究姿勢に刺激され,とても議論が盛り上がる会となりました。皆さん,本当にありがとうございました。

次回例会は,12月18日(日)13時からとなります。ふるってご参加ください。

2011年6月例会報告

昨日,6月例会を終えました。今回は,森俊弘さんが「関係史料からみた妙善寺合戦-主に古伝承の検討を通じて-」と題して,報告をしてくださいました。当日は,広島や大阪・徳島からもお出でいただき,11人の方が参加されました。

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報告の概要については,以下の通りです。
①従来,「備前軍記」を中心に述べてこられた妙善寺合戦について,その他の二次史料や関係する一次史料を,精緻に分析していった結果,備中勢の布陣や実際の戦闘など,再検討が必要である。
②備前・備中だけではなく,周辺地域との関係を視野に入れることが必要である(報告では播磨国の浦上氏について言及。
③関係概念図や地図を使うことによって,より具体的に理解しやすいように工夫されていた。

詳細については,いずれ文章化をされるとのことなので,ここでは記載をいたしません。どうしても知りたい方は,ご連絡下さい。
参加者からは,使用していた資料の特色や意義,関係概念図の近隣地域や前後の時代への発展への期待,史料の読み込みに関する検討等の意見・質問が寄せられ,森さんからも丁寧な回答がされました。

森さん,お忙しい中ご準備いただきありがとうございました。

7月・8月の例会はお休みに致します。次回は,9月4日(日)午後を予定しております。詳細が決まりましたら,掲示板やメーリングリストへ告知いたします。また,報告を希望される方が居られましたら,内池までご一報ください。

2011年5月例会報告

5月28日(土)13時から、岡山県立図書館2階サークル活動室1において、5月例会を開催しました。当日は、広島近世近代史研究会の方にもお越し頂きました。足下の悪い中、20名を越える方にお出で頂き、ありがとうございました。

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今回は、今年に入ってから存続について話題になっています林原美術館について、展示見学と同館浅利尚民学芸員による活動や資料の様子についてお話いただきました。

最初に私から簡単な林原美術館概要や、存続を巡ることについて情報提供を行いました。その後、林原美術館に移動して、浅利学芸員によるギャラリートークを拝聴しました。

5月29日(土)まで開催中の企画展「華やかな屏風」では、坤與万国全図屏風(世界図)や竹図屏風など、優雅で力強い屏風が展示されており、これまでの調査で明らかになってきたことを、浅利さんの丁寧な解説とともに楽しむことができました。

会場を図書館に戻して、引き続き浅利さんからこれまでの展示等によって分かってきたことや、林原美術館が所蔵している池田家伝来の資料群の意義等についてお話していただきました。岡山大学付属図書館に所蔵されている池田家文庫の資料群とともに考察していくことで、近世大名池田家を復元することができることがわかりました。

質疑応答では、林原美術館の資料の保存状況や、池田家資料の復元に対する見通し等、様々な視点での意見がありました。また、浅利さんが館に戻られた後には、林原美術館の資料をどのように活かしていくべきなのかについても話し合いました。

まとめとしては、林原美術館の展示を見に行き、どのような資料があるのか現物をしっかり見ること、また同館が刊行している紀要を講読して、どのような成果が積み重ねられているのかを知ること、さらには、「傍観者」としてではなく積極的に考えて、周囲の人たちへも働きかけていくことが大切ではないかということになりました。

例会終了後は、駅前の居酒屋において、時間の許す限り両会の参加者の懇親会を盛会の中で終えることができました。

貴重な情報提供をしていただいた林原美術館の浅利尚民さん、ならびに林原美術館の皆様のおかげで、大変盛り上がった会を行うことが出来ました。この場をかりて御礼申し上げます。ありがとうございました。

次回例会は、6月25日(土)13:30から、岡山大学総合研究棟において行います。報告者は森俊弘さんで、題は「関係史料からみた妙善寺合戦―主に古伝承の検討を通じて―」の予定です。ふるってご参加下さい。

2011年4月例会報告

4月16日に、山本太郎さんが「幕末維新期幕府領陣屋元村豪農商の金融―備中国窪屋郡倉敷村大橋家を事例として―」と題して報告をしてくださいました。

 

備中国窪屋郡倉敷村(現倉敷市美観地区)で豪商として活躍した大橋家を中心に

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分析されたもので、文政年間から幕末にかけての大橋家の動向や経済活動の状況などが豊富な資料が用意されていました。

その中からは、時代の状況にあわせてたくましく活動する様子や、幕藩権力の衰退に伴う多額の献金の実態などを知ることができました。
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質疑応答の中で、大橋家当主がいわゆる「身上がり」を求めていたのか、大橋家の経営がひとつの家としての経営なのか、それとも地域経済の中の一部として考えるべきなのか等が話題としてでてきました。

山本さんの著書『
近世幕府領支配と地域社会構造』でも取り上げられている大橋家の研究がさらに進んでいることをおうかがいすることもできました。ありがとうございました。

2011年1月例会

本日,1月例会を開催いたしました。石畑(こくはた)匡基さんが,「宇喜多騒動の再検討と関ヶ原合戦における意義」と題して報告を行いました。

近年,研究が進展している宇喜多氏ですが,大西泰正さんが取り組んでこられている宇喜多騒動について,石畑さんが興味深い視点を設定して報告をして下さいました。いずれ何らかの形で成果を出していただけるのではないかと考えておりますので,簡単な紹介にとどめておきたいと思います。

大西さんが主に用いた史料『戸川家譜』ではなく,別の史料を中心に論を展開されていました。また,極力1次史料を中心に論を展開することを試み,騒動の沈静化に携わったであろう人物の洗い出しを丁寧に行うことで,宇喜多騒動の豊臣政権における位置づけについて考察を行っていました。

質疑応答の中では,騒動の経過の妥当性,史料操作等が中心に話し合われました。終始,石畑さんの熱意と参加者の興味・関心によって,おもしろい話し合いが展開されました。史料が圧倒的に不足している中で,どのようにして,事実へたどり着けるのか,どのような社会背景があったのかについて,丹念に史料を読み込みながら,議論ができたように思います。
個人的には,「一次史料は信頼度が高い」「二次史料は信頼度が低い」という設定に疑問を感じました。むしろ,「確実に利用できるのはどの箇所か」について,しっかりと史料批判を行うことは,一次史料と二次史料いずれにも必要ではないでしょうか。残された史料から何が語れるのか,何が語れないのかを,しっかり考えていきたいものです。

いずれにしても,このように史料の大切さ,史料を読むことの楽しさを再確認できたのは,石畑さんの報告のおかげです。石畑さん,ありがとうございました。

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