2018年2月例会報告

2月24日午後、2月例会が行われました。今回は、内池昭子さん「小山家文書の史料紹介-明治期、地方における女子修学について-」と、倉地克直さん「池田綱政の発入国と光政」の二本の報告が行われました。

内池さんは、以前『岡山地方史研究』140に掲載した「吉備津彦神社社家 小山家文書について」で紹介した資料群の中にあった、明治期の女性の学びについて書かれている書状を紹介してくれました。
近刊予定の会誌に本日の内容を掲載されるということですので、詳細についてはそちらをご覧下さい。
倉地さんは、岡山大学附属図書館池田家文庫にある綱政宛池田光政書状8点を紹介してくれました。池田綱政の発入国にあたって、細かく光政が指示をしている様子が分かると共に、綱政に期待をしている光政の様子も知ることが出来る史料でした。
内池さん、倉地さん、お忙しい中ありがとうございました。
次回は、3月24日(土)午後を予定しています。詳細については、後日ご連絡いたします。
4月以降についても、決まり次第お知らいたします。いましばらくお待ちください。
Dsc03105

1月例会報告

 120()21()に,ノートルダム清心女子大学を会場として第4回全国史料ネット研究交流集会が開催されました。二日間の日程の中で,2本の基調講演と各地からの計13本の報告及びポスターセッションが行われました。

これまで岡山史料ネットは,災害に対する「予防ネット」として活動してきました。岡山での開催となった今回の研究交流集会では,以前から指摘されている災害発生前の取り組みの重要性を踏まえ,「地域歴史遺産の減災」について議論が交わされました。

各講演・報告の内容については,後日報告書が作成される予定のため,ここでは省略いたします。

なお,今後の例会については現在調整中です。日程が決まり次第,改めてお知らせしますので,今しばらくお待ちください。(小野)

5月例会報告

513()5月例会を行いました(参加者:17)。今年度から岡山大学大学院社会文化科学研究科に進学された板谷真由さんと山田祐理子さんが、卒業論文を報告してくださいました。

板谷さんは「17世紀後半の新吉原と浅草田町」と題して報告されました。新吉原の周辺地域であった浅草田町をフィールドとして設定し、17世紀における遊女奉公の実態を分析されていました。そして、浅草田町にある遊女屋が新吉原へ遊女を転売していた事例から、新吉原に対しその周辺地域が遊女の供給地として機能していたのではないかと指摘されました。

Cimg5126
山田さんは「近世後期備中の用水組合と地域自治 ―都宇郡沢所組の事例から―」という題で報告されました。幕領(倉敷代官所)、藩領(岡山藩)、旗本領(戸川家)と支配者が入り組んだ備中国南部において、用水を管理するために成立した沢所組の実態と、嘉永
6年に起きた用水をめぐる争論について検討されていました。この沢所組の運営には、大庄屋や郡中惣代といった中間支配機構が介入せず、組を構成する村々の庄屋や名主によって行われていた点から、領を越えた地域社会の自治が見られることを明らかにされました。

報告後の質疑応答では、まず板谷さんの報告に対して、新吉原とその周辺に広がる地域の性格を把握する必要性があることや、売られる女性の意識はどうだったのかという遊女の主体性に関する問題等について意見が出されました。山田さんの報告については、沢所組を構成する村々の規模や、その自治の実態はどれほどであったのか、争論において自治が機能しなくなった場合の支配者側との関係性等について議論となりました。

前回の例会に引き続き、今回も多くの方が例会に参加してくださいました。今回の例会をとおして、研究史を整理し、史料を丁寧に読み込んだ上で様々な視点から解釈していくことの重要性を改めて認識しました。歴史学の研究に携わる者にとって当然のことではありますが、はたして自分にはそれができているか、反省しなければならないように思います。

報告をして下さったお二人の方,ありがとうございました。(小野)

6月例会は、下記の要領で開催いたします。ふるってご参加下さい。


○6月例会

日時:610日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者:別府信吾さん

タイトル:「塚村嘉伝太編著『剥復録』と西山拙斎」

4月例会報告

4月例会を、415日(土)13:30から行い、14名の方が参加してくださいました。

 

原豊二さんが、「池田光政書写本について~和歌関連資料を中心に~」と題して報告されました。近年、池田光政が筆写した風葉和歌集が見つかりましたが、それ以外にも光政や綱政が筆写した和歌集があり、誰に見せてもらったのかや、どうしてそのような筆写をしたのかについて検討した事柄について話してもらいました。

Sdsc_8378

参加者からは、和歌集等についての情報のやりとりをどのようにしていたのか、なぜ何度も筆写したのか、藩主の文化活動とはどのようなものだったのか等の質問があり、活発な話し合いが行われました。

Sdsc_8379
忙しい中、報告してくださった原さん、ありがとうございました。

 

5月以降の例会は、下記の通りです。

5月例会

日時:513日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者(1):板谷真由さん

タイトル(1):「17世紀後半の新吉原と浅草田町」

報告者(2):山田祐理子さん

タイトル(2):「近世後期備中の用水組合と地域自治ー都宇郡沢所組の事例からー」

※なお、当日18時から、鳥好野田屋町店で懇親会を行います。希望される方は、56日(土)までに上村和史さん(uemura05(アットマーク)gmail.com)までご連絡ください。

 

○6月例会

日時:610日(土)13:30

場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)

報告者:別府信吾さん

タイトル:「塚村嘉伝太編著『剥復録』と西山拙斎」

2017年3月例会報告

 3月例会を、岡山史料ネットワークセミナーの合同例会として開催いたしました。今回の参加報告は、愛媛県から来られた岡本佑弥さんに参加記を寄せていただきました。
 以下は、岡本さんの参加記です。

(参加記)

 3
4()、岡山地方史研究会3月例会・2016年度岡山史料ネットセミナーが合同開催されました(参加者:14名、会場:岡山大学文学部会議室)。本例会は、昨年12月に愛媛県松山市で開催され、岡山史料ネットが後援・報告を行った第3回全国史料ネット研究交流集会での議論をもとに、岡山史料ネットの役割を考える場として設けられました。全国史料ネット研究交流集会では、全国各地における地域の歴史資料を保全する実践が報告されています(集会の予稿集はhttp://henro.ll.ehime-u.ac.jp/post-1100/に掲載)

本例会の概要は次の通りです。

上村和史「岡山史料ネットの活動と各地の動向」

首藤ゆきえ「第3回全国史料ネット研究交流集会へ参加して考えたこと」

以下、各報告の内容を紹介します。

 上村報告では、近年の岡山史料ネットの活動として、岡山県文化財等救済ネットワーク(県ネット)とのさらなる連携の在り方が示されました。さらに新たな活動として、災害に即応した史料レスキュー用物資の備蓄状況調査とその意義について説明がありました。全国史料ネット研究交流集会でも報告された上村さんは、各地の動向として、愛媛資料ネット、地域史料保全有志の会の実践を、ご自身が活動に参加された時の写真を用いて、わかりやすく紹介されました。

 

Imgp1263_2

 首藤報告は、全国史料ネット研究交流集会の各地の報告内容を、岡山史料ネット及びご自身が勤務されている井原市での活動において、いかに活かしていくかを提起したものでした。その中で報告者は、災害時における史料ネット、県、市町の役割分担を協議する必要性を挙げられていました。このことは、初動をより迅速に行うためにも、不可欠のことであると考えられます。長年、市史編さん事業や文化財行政に携わる首藤さんは、文化財や市史編さん関係史料の所在確認調査を継続して行っておられます。それとともに、地域の災害の歴史を市民へ伝える小まめな展示や講座の実践について紹介されました。

報告後の議論では、県ネット(自治体文化財担当者)との連携、「予防ネット」として発足した岡山史料ネットの在り方についての大きく二点が主題となりました。

H2934_2

愛媛大学大学院生として愛媛資料ネットの活動に携わっている筆者は、岡山史料ネットの活動に初めて参加させて頂きました。愛媛資料ネットは、2001年の芸予地震直後に発足しており、事前から災害発生に備える目的で発足した「予防ネット」である岡山史料ネットとは発足の経過が異なります。議論のなかで言及された通り「予防ネット」であることは、岡山史料ネットの特徴であり、今回の両報告からも日常から「緩やかな連携」のもとに資料保全活動(とその準備)を行うことの重要性が示されたと考えます。

 貴重な報告をして頂いた上村さん、首藤さん、ありがとうございました。(岡本佑弥)

※4月以降の例会については、現在調整中です。決まり次第お知らせいたします。

2017年1月例会報告

129()1月例会を行いました(参加者:6)。辰田芳雄さんが,「林原美術館蔵池田光政自筆・岡山県立博物館蔵池田綱政自筆「古文孝経和歌」について ―明応二年四月二日一条兼良十三回忌追善の勧進和歌の発見― 附録:文明十二年九月一日起日後土御門天皇主催着到和歌」と題して,報告をして下さいました。

報告では,まず一五世紀後半から一六世紀前半に流行した着到和歌の概要について,お話くださいました。この着到和歌の中で『孝経』を題として詠まれたものが一条家に伝わり,池田光政は,次女の輝子が一条家へ嫁いだことから詠古文孝経和歌を入手したのではないかと推測されていました。

Cimg5098

報告後の質疑応答は,大名が和歌を写す意味は何かという点を中心に進みました。池田家に限らず,近世には多くの大名が様々な和歌の抜き書きをしています。辰田さんは,それは公家文化への憧れにとどまらず,中世以来の朝廷を中心とした伝統を利用することが,大名による支配への権威付けに寄与するものではなかったかと述べられていました。また光政が和歌の中でも詠古文孝経和歌を写したことについては,儒学を推進した彼の政治行動を裏付けるという側面が考えられるのではないかとも述べられました。

辰田さん,ありがとうございました。(小野)

12月例会報告

12月4日(日)午後に、12月例会を行いました。

今回は、次田元文さんが「岡山藩の医者について」と題して報告してくれました。

Dsc_6669_2

岡山大学附属図書館にある池田家文庫の史料を用いて、岡山藩の医者の組織の全体像を明らかにしようとしたもので、どのような役割分担をしていたのかや、誰がその役職を勤めたのか等、具体的に説明されました。

参加した方からは、牛窓等の在番があったところにいた医者が、どのような理由で異動してったのかや、医者の後継者はどのように定められていったのか等について、質問が出る等しました。
次田さん、貴重な報告をありがとうございました。

Dsc_6670_2

その後、総会が行われました。総会では、来年の会長及び委員の人選や会の予算等について報告をがありました。

2017年の体制
会長:定兼 学
編集局(局長)倉地克直 (局員)沢山美果子、三宅正浩、山下 洋
事務局(局長)村上 岳 (局員)小野功裕、内池英樹、久野 洋、東野将伸、上村和史
会計監査 金谷芳寛

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

来年1月の例会は、1月下旬を予定しています。決まりましたら、お知らせいたします。

11月例会の報告

1119()11月例会を行いました(参加者:9)。飯島章仁さんが、「岡山市立図書館所蔵の山田貞芳旧蔵書について」と題して、報告をして下さいました。

 山田貞芳氏は、明治から大正期にかけて岡山地域で活躍した歴史家であり教育家です。山田氏の蔵書は昭和3年に山田文庫として約3,500冊余が岡山市立図書館に寄贈されましたが、岡山空襲の際に大半が焼失し、現在80数冊が残っています。

Cimg4804_2

 例会では飯島さんが山田文庫の内容を、詳細な目録を作成して紹介してくださいました。また、岡山藩に学者として仕えていた小原大丈軒の著書や彼が筆写した書物が山田文庫に多く含まれていると指摘されていました。

Cimg4805_2
 
 報告の最後では、山田文庫の中には保存状態が悪いものもあるため修復を進めていくとともに、そのような状態の史料を一般に広く公開していくためにも、史料のデジタル化をより一層進めていく必要があると述べられました。

飯島さん、ありがとうございました。(小野)

12月例会については、先にアップした記事をご確認ください。


2016年9月例会報告

9月17日(土)13:30~、岡山大学総合研究棟2階演習室で、9月例会を行いました。参加者は、10名でした。
今回は、難波修さんが、「編著物の執筆者とその周辺-情報の伝播と方向性に関する一考察-」と題して報告してくださいました。
Dsc02117
発表していただいたレジュメにあった概要を元にすると、『吉備前鑑』(以下、『前鑑』)の成立過程における増補記事に着眼して、「俳諧」や井原西鶴作品の題材等を検討したところ、光政・綱政期の岡山城下における人間関係が大きく影響を与えていたということでした。
登場する人物が多岐に亘っており、お話しを追いかけていくことが大変な場面がもありましたが、『前鑑』という近世編纂物を詳細に分析することで、当時の岡山藩池田家の一側面を見ることができることが分かりました。
詳細については、今後、原稿化されると思いますので、そちらを楽しみにお待ちください。
難波さん、ありがとうございました。
次回以降の例会については、後日ご紹介したいと思います。今しばらくお待ちください。
 

2016年7月例会報告

 7月2日(土)、7月例会を行いました(参加者:9名)。大阪大学大学院の古林小百合さんが、「豪農による地誌出版の経緯とその受容―備中国川上郡平川村平川金兵衛による地誌『備中府志』の出版活動を事例として―」と題して、報告をして下さいました。

Cimg2087

 『備中府志』は、平川村の庄屋を務めた平川金兵衛が備中国の古城跡について著した地誌です。報告では、先行研究の成果を踏まえながら、平川金兵衛が大坂の書肆毛馬屋から『備中府志』を自費出版した経緯について、主に平川金兵衛と毛馬屋との書状等から詳しく分析されていました。

 参加者からは、出版された『備中府志』の受容層は由緒を持つような上層農民に限られたのではないか、自費出版の場合、版木の所有権は著者と書肆のどちらにあるのか、『備中府志』を出版した毛馬屋の性格などについて、意見が出ました。また報告では、『備中府志』は武士層にも読まれていたことが指摘されていましたが、史料解釈を通して、その武士は備中国出身あるいは何らかの関わりを持つ者であったのではないかといった意見も出ました。
Cimg2085

 個人的には不勉強な部分が多く、終始参加者による議論の傾聴でした。今回の報告を通して、庄屋クラスの上層農民が地域の過去に目を向けてその成果を地域へ還元した点に、近世の人々が持っていた地域意識の一端を感じることができたと思います。(小野)