2015年12月例会報告

 今回の例会では、倉敷市総務課歴史資料整備室の立石智章さんが「備中岡田藩主の領内巡見とその特質 ―代替りの巡見を中心に―」というテーマで報告されました。

 備中国下道郡および美濃、河内、摂津に領地を有した一万石程度の外様小藩である岡田藩主伊東家による領内巡見について、岡田藩の記録や大庄屋の日記を手掛かりに丁寧な分析をなされていました。

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 報告では、下道郡内の飛地であり他領を通行しなければならない水内(みのち)への巡見を中心に検討が加えられていました。その中で、近村への巡見よりも多くの費用をかけて参勤交代に近い規模の行列を整えたことや、巡見の際に村々が藩主を「馳走」することを名誉として認識していたことを指摘されました。

 

報告後の議論では、多岐にわたる論点が出されました。村役人による「馳走」が村内部における社会秩序の再確認と成り得たことや、他領と接する村の境目を確定することがあったことから、巡見は村にとって名誉以上の意味を有していたのではないか、という村の側からの視点が示されました。また、小藩であるがゆえに領民との関係維持のためには岡田藩自身が巡見を必要としたのではないかという意見もありました。その他、入封時の巡見との関係を問う意見や、他藩の事例紹介もあり、とても活発な議論となりました。

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今回の例会報告は、小野功裕さんが書いてくれました。ありがとうございました。

7月例会報告(「書物・出版と社会変容」研究会との合同例会)

7月4日午後、岡山県立博物館講堂を会場に、岡山地方史研究会7月例会を開催しました。参加者は、約60名でした。
今回は、「書物・出版と社会変容」研究会(書物研)との合同例会で、いつもと内容をかえ、4名の方に報告をしていただきました。
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(報告者・タイトル)
横山定さん「備中松山藩校有終館蔵書」
竹原伸之さん「旧閑谷学校蔵書」
近藤萌美さん「幕末維新期における備前岡山藩国学者小山敬容の祭祀観
          -読書・写本・書物の入手の実態から-」
木下浩さん「江戸末期在村医の蔵書について」

前半のお二人は、備中松山藩と岡山藩の学校の蔵書について、蔵書印やそれぞれの書籍の内容等について報告していただきました。
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後半のお二人には、それぞれ国学者・在村医という仕事を営んでいた人が、どのような蔵書を有していたのか、そこからどのような知を得たり、周辺の人と共有していたのかなどについて話をしてもらいました。

四つの報告をまとめて紹介することは、このホームページでは難しいのですが、いずれの報告も、岡山をフィールドにしたものでしたので、県内の参加者はもちろんですが、県外から参加された方へ岡山の地域史研究から得られた知見をお伝えする機会になったように思いました。

質疑応答の時間には、県外から参加された方を中心にご質問をうけたり、県外の情報提供をいただくようにしました。東北や鳥取などの情報をお聞きすることができたことも、合同例会を開催してよかったと思っているところです。
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例会終了後は、岡山市内で懇親会を行いました。41名の方が集まってくださり、大変盛り上がった中で終了することができました。
このような機会をいただいた書物研の皆様、ありがとうございました。
また、お忙しい中ご報告いただいた4名の皆様にも感謝いたします。お世話になりました。

8月は例会はありません。9月以降の例会については、後日改めてお知らせいたします。

2014年9月例会報告

幕府領陣屋元村の掛屋と陣屋・地域社会と題して、備中国窪屋郡倉敷村を取り上げ報告してくださいました。

山本さんは、以前から倉敷村にあった代官陣屋を中心に研究をされており、2010年には清文堂から『近世幕府領支配と地域社会構造』を刊行されています。
今回は、代官陣屋の掛屋をしていた水沢家や大橋家のことを取り上げられていました。いずれも19世紀後半に活躍した豪商ですが、山本さんによると金融業を生業としていた大橋家は、そのノウハウを活かしていたのではないかと指摘されていました。また、公金の管理という役割は、大橋家自身の格式を上昇させていくことにも繋がっただろう等、興味深いお話を聞かせてくださいました。

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質疑応答では、掛屋の実態や活動内容、大橋家当主のパーソナリティ、倉敷村内部の重層構造等が話題となりました。

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次回は、下記の要領で行います。ふるってご参加ください。
日時:10月18日(土)13:30~
場所:岡山大学総合研究等2階演習室(5)
報告者:蒲谷和敏さん(大阪大学大学院博士前期課程2年)
題目:「第一次大戦期の社会変容と水道ー尼崎における水道布設を手がかりにー」

『岡山地方史研究』132号の発刊について

『岡山地方史研究』132号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第132号 2014.5
論文 応仁・文明の乱後の荘園支配の様相-備中国新見荘を事例として-…渡邊太祐(1)
参加記
フォーラム・大規模自然災害に備える『災害に強い地域歴史文化をつくるために』に参加して…金谷芳寛(19)
参加記 就実大学吉備地方部下研究所二〇一三年度歴史シンポジウム
「古代地域史フェスタⅢ~歴史考古学の現在~」…加栗貴夫(22)
博物館・展示会めぐり 二〇一三年秋の特別展覧会を観覧して…辰田芳雄(28)
2013年度会系決算・監査報告…(32)
編集後記…(32)

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『岡山地方史研究』131号の発刊について

『岡山地方史研究』131号が発刊されました。内容は、次の通りです。順次,会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

岡山地方史研究第131号 2013.12
歴史随想 「日記」資料に寄せて…在間宣久(1)
論文 岡山藩の神職組織と祭祀について…次田元文(7)
論文 近世後期の寺院頼母子と檀家-備中国後月郡の寺院を題材に-…東野将伸(28)
編集後記…(54)
岡山地域史研究文献目録(総説)…(58)

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2013年10月例会について

10月19日(土)13時半から、岡山大学総合研究棟演習室において、10月例会を行いました。関西大学大学院の古林小百合さんが、「由緒書の成立背景についての考察」と題して、備中国川上郡平川村H家の由緒書を事例に取り上げて報告してくれました。
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村の由緒と家の由緒の共通点と相違点を意識しながら、中世に西遷してきたH家の由緒が、江戸時代を通してどのように生きていたのか等について、興味深い話をしてくれました。

現在作成中の修士論文の途中経過の話でしたが、享保期に成立したと考えられる由緒が、どこまで中世史の事実として通用するかや、近世に於ける豪農経営の一端と由緒との関わりなど、長く続いていったH家の特徴がよく分かるものとなっていました。
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参加者からは、それぞれの興味に沿ってではありますが、家の成り立ちや豪農経営の状況等について活発な質問や意見が出てきました。個人的には、H家がどのように中世における由緒を、近世へ繋げていったのか。また、それを近世の子孫がどのように活用していったのかがおもしろかったです。

古林さん、ありがとうございました。

次回は、11月24日(日)13時半から、岡山県立記録資料館において12月例会を行う予定です。なお、当初予定していた忘年会は、諸般の事情により行わないことにさせていただきます。ご了承ください。

2013年9月例会報告

9月22日(日)に、9月例会を行いました。報告者は糸川風太さんで、「公儀浦触廻達にみる幕府拡大支配の実現とその変遷-紀州藩を中心に-」というタイトルでした。

今年度提出される予定の修士論文の概要で、幕府から出された浦触がどのように廻達されたのか、具体的にはどのような内容が取り扱われたのか、紀州藩領内と他地域との比較等についてお話いただきました。

参加者からは、浦触と通常の村継ぎによる藩触との違いや、年代や内容による扱いの変化、他藩での実態等について質問がでました。触とともに各村々の請印帳が2巻つけられていたことや、決して汚さないようにと特別に付記があったこと等が、私個人としては興味深く思いました。Dscn4626

今後、修士論文にまとめられるということなので、ここでは多くを取り上げませんが、糸川さんが報告レジュメのとおり丁寧にまとめていかれることと楽しみにしております。

次回は、10月19日(土)13:30から、岡山大学総合研究棟2階演習室(5)で行います。
報告者は、古林小百合さんで、タイトルは「村の由緒とその機能―備中国川上郡平川村平川家を事例として―」です。ふるってご参加ください。

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2013年1月例会

「「産む」「育てる」ことの近代」と題して,沢山美果子さんによる報告を行いました。参加者は10名でした。寒い中,お集まりいただきありがとうございました。

『邑久町史』に掲載されている業合家の日記をもとにして,明治15年(1882)の地域における子育てや出産についての分析をされた,途中経過をお話いただきました。近世,近代の連続・非連続に留意しつつ,日記から見えてくる当時の状況から,日本の近代化過程を垣間見ようとした取り組みだったと思います。

参加者からは,業合家の近代社会での位置づけや評価の妥当性,邑久郡上山寺村の状況把握,医療技術の変化,日記という個人資料の利用について,活発な意見・感想が出されました。
今後,今回の報告内容は,著作物にされるということでしたので,いずれ沢山さんのお仕事として発表されると思います。詳細については,そちらをお楽しみにしてください。
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次回は,2月9日(土) 13時半から,岡山大学総合研究棟演習室(3)において,東野 将伸さんによる「近世後期の頼母子講運営と豪農・豪農商ー備中国後月郡・小田郡を題材にー 」と題して行います。ふるってご参加ください。

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『岡山地方史研究』127号の発刊について

『岡山地方史研究』127号が発刊されました。内容は、次の通りです。すでに会員の皆様には郵送されたのではないかと思いますが、購入を希望される方がおられましたら、内池までご連絡ください。

今回は、現在調査を和気町と岡山大学が調査を行っている大國家文書の特集が組まれています。

岡山地方史研究第127号 2012.9
大國家文書にみる豪農の生活と文化
大森満體像と史料   柳川真由美(1)
大國家と家相 … 森元純一(12)
大国家の相続と鬮文化 … 倉地克直(22)
書評 山本太郎著『近世幕府領支配と地域社会構造-備中国倉敷代官所管下幕府領の研究-』  山崎 圭(31)
参加記 平成二四年度岡山史料ネット講演会に参加して  浅野慎太郎(37)
編集後記  (38

2012年7月例会

7月21日午後、「「穂田」元清と備中の戦局」と題して、石畑(こくはた)匡基さんに報告をしてもらいました。

毛利の一族としての元清の動きや、位置づけなどを史料を元にお話していただきました。その後、参加者との質疑応答を行いました。
主な内容としては、史料の解釈、発給文書目録の利活用、支城領としての猿懸城の意義、元清の毛利家に於ける位置づけ等が出て、活発な討論が行われました。

例会終了後、岡山市内で暑気払いを行いました。3時間ほどにわたり、参加者同士の懇親を深めることができました。

9月以降の報告者を募集しておりますので、希望の方は、内池までご連絡ください。

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