5月19日(土),5月例会を行いました(参加者:10名)。大阪大学大学院の綱澤広貴さんが「近世後期津山松平藩における村方支配機構と下級役人」と題して報告してくださいました。
綱澤さんは、津山藩松平家を事例として藩の行政機構に属する役人のうち、士格ではない大役人及び小役人と足軽等の奉公人を下級役人と定義します。その上で先行研究を踏まえ、大庄屋の存在する地域での下級役人の機能や権限を検討することで、近世領主支配の特質の解明と大庄屋を介した支配の相対化を目指しました。
報告では、史料として藩政日記、勤書、御定書を用い、特に郡代所役人について検討がなされました。その中でも奉公人層で構成される下代に注目しておられました。下代は、奉公期間が長期に渡りかつ世襲であったこと、在村し地域社会の様相を認識しやすい立場にあったこと等から、郡代所において果たす役割が次第に大きくなりその権限も増大していったことを明らかにされました。そして、近世領主支配が大庄屋にとどまらず、広く地域社会へ依存していたことを指摘されました。
報告後の討論では、様々な論点が挙げられました。下代は自立性を持った集団と言えるのか否か、下代の世襲の実態、郡代所と大庄屋を同次元で扱うことの是非、報告内容の藩政史における位置付けはどのようなものか、松平家の御家門という家格との関係性等といった意見が、参加者の側から提示されました。
報告していただいた綱澤さん,ありがとうございました。(小野)
次回の6月例会は下記の要領で行います。ふるってご参加ください。
〇6月例会
日時:6月30日(土) 13:30~
場所:岡山大学総合研究棟2階演習室(5)
報告者:三宅正浩さん
題目:「八月十五日付池田輝政書状をめぐって―天正十八年、池田輝政の三河吉田入部―」